埼玉大学研究シーズ集2022-23
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65キーワード電気化学、電解、触媒、アルコール、アルデヒド、エステル、アセタール、カーボンニュートラル、再生可能エネルギー触媒膜とイオン交換膜が一体になったデバイスがアルコールを高付加価値分子に転換する■?研究概要分子のかたちを少しだけ調節すると、その機能は劇的に変化します。たとえばエタノールは心地よい酔いをもたらしますが、エタノールから水素を2つ取り除いたアセトアルデヒドは二日酔いの源です。工業的には、アルコールを原料にしてアルデヒド、エステルといった機能性分子が合成され、私たちの身の回りの品を作るために役立っています。これまでは、熱(化石資源を燃やして得ます)と酸化剤(水素を引き抜く試剤です)を使ってアルコールの転換が行われてきましたが、化石資源の燃焼は二酸化炭素の排出につながり、さらに酸化剤を使うと大量の廃棄物がでることが問題です。私たちは、太陽光発電などで生まれる「電力」だけをエネルギーにした新しいアルコールの変換プロセスを開拓しています。鍵を握るのは、触媒膜とイオン交換膜です。これらが協働することで、アルコールから水素を引き抜き、高付加価値な分子を創り出すことができます。■?産業界へのアピールポイント●二酸化炭素を排出しないクリーンな物質転換プロセス●再生可能エネルギー由来の電力を使った物質転換プロセス●コンパクトな電解ユニットを用いるため、どこでも「オンデマンド」で反応可能●触媒当たりの生成速度は既存の固体触媒プロセスと同等かそれ以上のパフォーマンス●アルコールから選択的にエステル、アルデヒド、アセタールを合成可能■?実用化例?応用事例?活用例●メタノールの電解によりギ酸メチル(化学工業の重要中間体)を選択合成●エタノールの電解によりアセタール(香料などの原料)を選択合成●エタノールの電解によりアセトアルデヒド(酢酸エチルの原料として工業的に大規模合成される)を選択合成荻原?仁志(オギハラ ヒトシ) 准教授大学院理工学研究科 物質科学部門 物質基礎領域【最近の研究テーマ】●炭素を下地に使うだけで、ペロブスカイトなどの複合酸化物ナノ粒子を合成●水の電気分解用酸化物触媒の開発●メタンからエタン、エチレン、ベンゼンなどの高付加価値化合物を直接合成電気と触媒のちからで分子のかたちを自在に変える

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